第93回  犬咬傷                           2012.7 


   近年のペットブームで犬や猫を飼う人が増え、それに伴い犬や猫に咬まれ
  て怪我をするケースが増えています。犬に咬まれた際に最初に頭に浮かぶの
  が狂犬病ではないでしょうか?

   狂犬病は、全世界で毎年約5万人が死亡していますが、ワクチン接種が普
  及した日本ではペット犬からの感染は心配ありません。注意が必要なのは、
  犬や猫の口腔内常在菌(パスツレラ菌、ブドウ球菌、レンサ球菌、カプノサイ
  トファーガ・カニモルサス、その他種々の細菌やウイルス等)による感染症で
  す。破傷風の心配もあります。


   その中で近年、報告患者数が増加しているのが、カプノサイトファーガ・
  カニモルサスを原因とする感染症「カプノサイトファーガ症」です。カプノサ
  イトファーガ症は、犬や猫に咬まれたり、ひっ掻かれたりすることで感染・
  発症します。発症率そのものは非常に低いと考えられているものの、傷口が
  小さくても全身症状を呈し、初期症状として、発熱・倦怠感・腹痛・吐き気・
  頭痛等が現れます。重症化して、敗血症や心内膜炎を発症した場合の死亡率
  は約30%と高くなります。
   死亡・重症化例は、高齢者や糖尿病、肝炎、アルコール依存症、脾摘後な
  ど、何らかの基礎疾患があり、免疫能が低下している場合に多いです。


   咬まれた時の応急処置
  
   まず、傷口を流水で十分に洗います。イソジンやオキシドールのような消
  毒薬は、傷の治りを遅くするので、傷口内部に使うべきではありません。出
  血が多い場合は、清潔なタオルを傷口にあてて、上から押さえて止血します。
  感染予防には抗生物質の内服が必要です。早急に医療機関を受診しましょう。


   犬に咬まれないために・・・犬が嫌がる本能を知り、気をつけましょう!
   
    犬のテリトリーに近づかないようにしましょう。
    いきなり犬に触ったり、目を合わせないようにしましょう。
    食べている時、寝ている時、仔犬といる時は近づかないようにしましょう。
    見知らぬ犬、怪我や病気をしている犬には触らないようにしましょう。

  犬咬傷は、悪化すると治療に時間がかかる上、命に関わる場合もあります。
  傷跡も目立ちやすいので、早めに医療機関を受診しましょう。